I Me Mine #2

先日の快速線「枯野」の船の船体の木材から琴を作れば「其の音,鏗鏘(さやか)にして遠く聆ゆ.」となった話,

 

https://shunadachi.hatenablog.com/entry/2020/10/27/232221

 

その後に応神天皇が歌を詠んでいます.

 

枯野(からの)を 塩に焼き,

其(し)が余り 琴に作り

掻き弾くや,

由良の門(と)の 門中(となか)の海石(いくり)に

振れたつ 漬(なづ)の木の さやさや.

 

「さやさや」は同じ音を繰り返す畳語で,副詞的表現として強調の意味があります.畳語は中国語にも見られますが,この場合は擬音語や擬態語として中国語ならではの音を重視したり,形容詞の強調の意味があります.オーストロネシア語族では畳語はこれとは違って名詞の複数を表しています.日本語にもこの用法があり,日本語は南方系民族の言語と中国・朝鮮の民族の言語の混ざったものと考えられることから,それぞれ似たような言語の用法があるのですね.インド・ヨーロッパ語族とは異なる点です.

西に目を向ければチュルク語族のトルコ語にも似たような用法があります.古くはシュメール語でも音の繰り返しで複数を表しています.日本語とシュメール語とは共通点が少しあるらしいのですが,これもその一つです.

 

「さやさや」のsayaは,オーストロネシア語族のマレー語では前にも述べたように「私」になります.

 

https://shunadachi.hatenablog.com/entry/2020/04/09/203827

 

sayasayaだとクローンが多勢いる感じでしょうか.上のリンクでで出て来たThe BeatlesGeorge Harrisonの歌,“I Me Mine” に関しては,シュメール語でmeがある(to be)の他に神の摂理を表すこともあるので,意味深にも思えます(笑).Meは因縁,摂理のような反対出来ない大きな力を生活の中に感じ取った時に使い,存在そのものである他,大衆的には宇宙の真理,天の道,神の能力とも解されました.スピノザ的な実体そのものが神であるという考えに似ていますね.イスラエルの神よりも大分前の話です.

 

現在見つかっている人類最古の都市はイェリコで,B.C. 8000頃の遺跡と推定されています.ザグロス山脈の麓のエラム国文化もこの頃から始まっています.B.C. 7000頃の彩色陶磁器は中国の半坡遺跡の彩陶にも影響していたとされています.B.C. 5000頃からのメソポタミアはウバイド文化期で,シュメール文化に先行しています.シュメール文化の始まりは大洪水の後,B.C. 3500頃です.ちなみにシュメールはアッカド語で,シュメール人は自分たちのことを ki-en-ĝir15と詠んでいます.kiは大地の女神,enは各都市の宗教上の王で,シュメール全体の支配者lugalと対比されます.ちなみに最高位の天空の神はanです.言葉って面白いですね.