RとBioconductor,熱学・統計力学(前半)

R3.6.2だとGOやKEGGなどのパッケージが使えなかったりいろいろなところであるパッケージが他のパッケージの関数をマスクしたりしていて,パッケージ依存性の状態がカオスになっている.また,forループなど計算速度が大幅に遅くなる要素もあって,初等的な統計データ解析以外にはRを使わない方が良さそう.基本はやはりC,C++Schemeの恩寵を受けたJuliaということにする.あとはRStanをちょっと弄って解析環境の基礎のお勉強は終わりにする.

 

最近は久保亮五『大学演習 熱学・統計力学 修訂版』(裳華房)も勉強しているのだけれど,発想が面白くて難しく,勉強になる演習問題が多々.最近の教科書の演習問題よりも面白い問題が多いので,昔の定番の教科書・演習書で基礎を固めるのは基本だと思う.物理学は生物学ほど一昔前の知見が陳腐にはなりにくいし,最近の話題は総説や論文でフォローすればいい.

 

演習問題の例として,例えば温度の存在定理について.

 

[1] 熱平衡状態が圧力pと比容vとによって指定される体系A, B, C, …がある.熱力学第0法則によれば,それぞれの系に特有な関数ϑA = fA(p, v) 等が存在し,二つの系(たとえば,A, B)が熱平衡にあるための条件はそれらの関数の値が等しいこと(すなわち,ϑA = ϑB)として表されることを示せ(温度の存在定理).この議論には,互いに熱平衡にある二つの体系の自変数の間には一つの関係式が成り立つ,という経験事実を用いよ.

 

とか,

 

[2] 1 kg重/cm2の圧力をもつ空気のJoule-Thomson係数µが次のように与えられている.(θ, µ) = (0, 0.257), (25, 0.220), (50, 0.183), (75, 0.153), (100, 0.129). また空気の密度ρは圧力p mmHg,温度θ °Cではρ = 0.0012932/(1 + 0.003699θ) • p/760 g/cm3でよく近似され,定圧比熱cpは0 °Cから100 °Cまでの間,ほぼ一定で0.240 cal/(g deg) である.以上のデータを用い,0 °Cが絶対温度の何度に当るか,数値を算出せよ.

 

とか温度の本質を突いているし,

 

[3] 適度に加硫したゴム糸を一定の長さに保ち温度を変えて,そのストレスの変化を測定した.温度T0における自然の長さをl0とすれば全張力(ストレス×断面積)とlとの関係はX = AT[l/l0 – {1 + α(T – T0)}(l/l0)2] によってよく表される.ここにαは断熱膨張係数で7×10-4 deg-1の程度である.このゴムを温度T0で自然の長さl0からそのL倍に急激に(断熱準静的に)引き伸ばす場合の温度変化(Joule効果という)Tを求め,これをLの関数として図示せよ.

 

とかはゴムの熱的効果が「見える」し,

 

[4] van der Waalsの状態方程式について,Maxwellの規則を証明せよ.ただし,安定条件を満足しない領域を避ける準静的過程により,その領域内の点Lとp座標が同じになる点AおよびEのGibbs自由エネルギーを算出して議論せよ.

 

はvan der Waalsのモデルに関して相の質量比が見える.

 

[5] 量子状態±ε0だけをとりうる粒子N個(例,スピン系)が,ある方法によって,全エネルギーEが正であるような状態におかれたとする.この系に理想気体温度計を接触させたとすればどんな結果が得られるか.

 

は,最終的結果に関しては直観的に即答出来るけれど,温度に関する面白い話.物理は専門ではないけれど,熱や統計物理に関してまだまだ学び足りないと感じられる.