熱学・統計力学(後半)

久保亮五編『大学演習 熱学・統計力学 修訂版』(裳華房)の後半戦.

 

[6] 古典力学,古典統計にしたがう体系では磁化率は厳密にゼロであることを証明せよ(Bohr-van Leeuwenの定理).

 

このシンプルな問題は,磁化率を適応度の期待値とあるパラメータの積の逆数とみて,それがまだゼロではないので非古典的な体系となる私のモデルのヒントになった.

 

[7] 実在気体のHelmholtz自由エネルギーF,Gibbs自由エネルギーGエントロピーS,内部エネルギーU,エンタルピーH,定積比熱CV,低圧比熱Cpについて,理想気体からのはずれの最低次の補正項を求めよ.

 

は,実在気体の取り扱い方について教えてくれた.

 

[8]  電子系の磁化率は,磁場がかなり強くなる(kTµBH << µ)と,磁場Hの関数として振動する項を含むようになる(de Haas-van Alphen効果).この振動項を求めよ.

 

は,環境の影響が大きいと振動する要素が出て来るので,私のモデルの適応度の期待値とも大きく関わって来る.

 

[9] Isingスピン系のBethe近似によって,隣接スピン対の平均数N++N--N+-を求め,これらがN+-2/N++ N-- = 4 exp(-4J/kT) なる関係を満たすことを示せ.

 

は,Bragg-Wiliams近似,Bethe近似,Kramers-Wannier, Kikuchi近似,Onsager厳密解へのinsightと共に,weight 4が出て来る仕組みもよく分かる.

 

[10] 電子系のBoltzmann方程式における衝突項を

(f/t)coll. = -Df = -f(v)∫W(v,) d + ∫W(, v)f() d

と書いて,fに対する演算子Dを定義する.W(v,) dvの速度の電子がv´  + dv´ の間に移る確率(単位時間当り)を表す(簡単のため,散乱によってエネルギーは変わらないとする).t = -∞ではE = 0で,電子系は平衡分布f0にあったとして,E(t)が任意に与えられた場合,Eの一次の項までをとる近似において時間を含むBoltzmann方程式を形式的に解き,時刻tにおける電流が一般的に

ji(t) = l-∞tEl(t´)dt´Fli(t – t´)i, lx, y, z成分を表す)

なる形に与えられること,しかも

Fli(t) = < ji(t) jl(0)>/kT

であることを示せ.ここに< ji(t) jl(0)>は平衡状態で導体の中にゆらぎとして生ずる電流の時間的相関を表す.この結果を用い,静的伝導率および動的伝導率をこの相関関数によって表せ.

 

は,伝導率に当たるものが私のモデルでは結局eの乗数となって現れることを教えてくれた.

 

この演習書は大変勉強になると思ってAtkinsのPhysical Chemistryの始めの方のProblemsを見ると,同じような内容なのに極度に劣化した問題ばかりのように思えた.久保『大学演習 熱学・統計力学 修訂版』を勉強したからと言って直ちに実際への応用は難しいと思うけれど,Atkinsの熱学・統計力学分野の方はごく基本的な計算問題に留まるのかなと思った.一口に熱学・統計力学と言ってもいろいろな世界と切り口がある.