免疫は高めるものでは無くて,つけるもの?

「免疫は高めるものでは無くて,つけるもの」だということを声高らかに主張している人がいるそうですね.獲得免疫に限って言えば免疫をつけるつけないという表現は分かりますが,自然免疫に関してはその活性を誘導して高める方法が(LPSでToll様受容体を活性化するとか)幾らでもあるので,高めるという表現を使うのは誤りではなく,寧ろ普通は全か無かではなく定量性が問題になるので免疫を高めるという表現を使うべきです.専門家の方に確認してもそうです.こういう仕様もない言い回しの揶揄はTwitter上ではたくさんあるのでほとんどは無視していますが,この元ネタであろう人はPCRに関して原理も実用性も全く無視したとんでもないデマを撒き散らしていて,世界レベルで有害なので早く放逐して欲しいです.

 

後,これはどこが元ネタかは知りませんが,ウイルスは交配をしないという人がいます.有性生殖をしないという意味では確かにそれは当て嵌まりますが,同じ細胞に2種類以上のウイルスが感染した場合,ゲノムの分節を交換したり,ゲノム間の組換えを起こすことは周知の事実です.コロナウイルスは組換えの権化であることが多くの研究から明らかですし,インフルエンザウイルスもゲノムの交換で進化して来ています.ウイルス粒子は適当でランダムにゲノムを取り込むので,そういうことが起こるのです.だから東京オリンピックでウイルス粒子間の交雑が起こって適応度の高いものが生まれるというのは全くの空理空論でもありません.

 

Twitter上で万を超えるようなフォロワーを持っている人は単なる目立ちたがり屋が多く,自分が全く分かっていないことも分かっていないようですが,先ずは免疫学やウイルス学の真面な教科書を読むことから始めた方がいいと思います.原著論文を読むようなレベルにはとてもありません.