【追記あり】鎌倉殿の13人#幕間

【註】ヒメシャラのようなアセビの写真が脱落していたので,upしておきました.

 

今週の『鎌倉殿の13人』の比奈と小四郎のシーン,比奈は小四郎が比奈を離縁しないという起請文の誓いを破ると小四郎が全身の毛穴から血を吹き出して死んでしまうという,そういう恐ろしいことになるから自ら身を引きたいと願い出ていた.比奈が小四郎の元に残っているといざこざが起きるので,これ以上小四郎の負担を重くしたくないという思いからだが,起請文の誓いを破らなくても小四郎にはもうそういう運命しか無いように見えて,居た堪れない気持ちも比奈にはあっただろう.視聴者的にはいつ比企尼が義時をあの世に連れ去ってしまってもおかしくないように見える.

 

古くは飛鳥時代秦河勝に起源を持ち,室町時代に集大成が行われた申楽(現代の能楽)には,能の方に修羅能というジャンルがある.伝統的な五番立では二番目物で,武人がシテ(主役)になり,武人の霊が修羅道に落ちて苦しむ様を描いている.『平家物語』に題材を得ている物が多い.修羅道は果報が優れていながらも悪業も負う者の世界だ.室町時代の価値観では武士は自らが悪道に落ちながらも何某かを守るという者だと考えられている.鎌倉時代初期はまだ武士という概念が確立していなかったと思うので時代が下る室町時代とは少し異なるかも知れないが,義時が泰時に「武士とはそういう者だ」と述べているのは,こういう思想も含めてかも知れない.義時は室町時代流では誠の武士だ.三谷幸喜さんは暗い話だけでは観ていられなくなるのでコミカルなシーンも入れる,ということを述べていたが,最近の『鎌倉殿の13人』では三浦義村の登場するシーンのみがコミカルなパートになっている.能楽でも能の演目の間に狂言が入り,為政者が楽しむ能と庶民が一息を入れる狂言という役割分担になっている.三浦義村はそういう意味で狂言回しになっている.ニブイ和田義盛も最近の回では流石に困惑して仁田忠常源頼家と絡んだりしていて,単なる気のいいおじさんぶりを発揮しているが,三浦義村だけは登場人物の中で平常運転をしている.こういう演出の構造は伝統的なものだ.

 

【追記】

https://twitter.com/maechan30/status/1562395942279450624

 

あれ,第一回で義時と姫姿の頼朝が馬で逃げるシーン,伊豆の金冠山でのロケだったのか!金冠山とその近くの達磨山には伊豆にいた頃(2011年),細胞性粘菌の採取に登ったことがある.修善寺からバスで近くまで行った.その時の過去ブログ(削除済み)をどうぞ.

 

 

こちらは2011年9月21日に台風15号のほぼ直撃を喰らった。台風の直撃は子供の頃以来で、955hPa、風速60m/sともなればスペックは今までの人生で最強の台風である。台風が通過する時は研究所内に居たが、技官さんは丁度帰る頃に台風の直撃を受けるので早めに帰ってしまった。私は夜9時頃には台風は抜けている予定なので、建物も頑丈な研究所でいつもと変わらず実験をしていた。建物自体は台風にはビクともしなかったが、下の渡り廊下の屋根が激しく振動し、守衛さんの部屋の窓が自動的に開いているのが見えた。玄関の自動扉からは雨水が浸入し、風が一番強い時に外に出たら髪の毛が一瞬でボサボサになったので直ぐに中へ退散した。7時頃にはまだ時折突風が吹くが雨も止んでいたので、帰路についた。遺伝研の構内は木の大きな枝が散乱し、折れてしまった木もいくつかあった。

これは門のすぐ傍のヤマモモMyrica rubraで、台風の被害の一抹が垣間見える。自宅の西のカキノキDiospyros kakiは無事だったが、南のビワEriobotrya japonicaは葉がたくさん落ちて、実も全部落ちてしまって可哀想だった。

 

さて、23日も細胞性粘菌のサンプリングがてら金冠山・達磨山に行ってきた。台風の被害が少し心配だったが、山頂近くまで車道があって小学生が登るような山なので、構わず行ってみた。土の調査をしていると「放射能の検査ですか」と声を掛けてくる人がしょっちゅういたが、時期がら仕方がない。場所によっては遺伝研構内や沼津アルプスよりもずっと高い微生物の活性を示す場所もあるので、サンプリングの結果が出るのが楽しみだ。

 

山道はアセビPieris japonicaがずっと生えていた。長九郎山には伊豆固有変種のアマギシャクナゲが生えているそうなので、是非行ってみたい。

 

こういう道だと小学生でも登れるというのは納得。両脇が背丈の低い林で芝の道だというのはイギリスの散歩道を思い出させる。

 

だるま山高原レストハウスから歩くと直ぐに金冠山が見えてくる。

 

マツムシソウScabiosa japonicaが生えていた。

 

金冠山には40分もかからずに着く。

 

達磨山も近くに見える。

 

これはアズマヤマアザミCirsium microspicatum。風衝林はアズマシャクナゲRhododendron degronianum、林床はアズマザサArundinaria ramosaで覆われているので、アズマづくし。東人になった気分だ。

 

戸田の集落に光が差し込み、美しい。

 

達磨山の一等三角点と山頂の標。ホオジロEmberiza cioidesが砂岩の上に留まった絶好のシャッターチャンスを逃した。

ヒメシャラのように見えるのは台風で樹皮が剥がされたアセビ。勿論ヒメシャラStewartia monadelphaも他の所に生えていた。

 

レストハウスに戻ってバスが来るまで近辺を散策すると、バークレイホネホコリDiderma platycarpum var. berkeleyanumが。ここは変形菌の天国のようだ。

 

台風後のクヌギQuercus acutissimaの森の林床。こんな台風の中山に居ると―

 

こんな風になってしまいますよ。アオダイショウElaphe climacophoraの親分、お悔やみを申し上げます。

 

ザイモクタケOxyporus ravidusが大量発生していた。

 

雲の切れ間から差し込む光でライトアップされた三島と香貴。そう言えば沼津アルプスのサンプルからは面白い粘菌が採れていました。

 

こんな何の変哲もない達磨像にも―

 

足の指をよく見ると弥生式土器のようなものが。トックリバチEumenes micadoの巣だ。

 

植物はこの他にもアカマツPinus densiflora、ヒノキChamaecyparis obtusa、サワラChamaecyparis pisiferaヤブツバキCamellia japonicaドウダンツツジEnkianthus perulatusネムノキAlbizia julibrissin、ブナFagus crenataミズナラQuercus crispula、クリCastanea crenata、アカシデCarpinus laxiflora、イヌシデCarpinus tschonoskii、マメザクラPrunus incisaを見た。変形菌はホネホコリDiderma effusumとシロススホコリFuligo candida、地衣類はウメノキゴケParmelia tinctorum、キウメノキゴケParmelia caperata、オオマツゲゴケParmelia reticulata、エビラゴケLobaria discolor、チズゴケRhizocarpon sp.、トリハダゴケPertusaria sp.、鳥はコゲラPicoides kizukiコルリErithacus cyaneヒヨドリHypsipetes amaurotisニホンザルMacaca fuscataの鳴き声も聞いた。

 

今日は大吟醸の銀嶺月山で一杯やっているところ。鮭とばをアテにしていると、何故か伊藤悠シュトヘル』を読みたくなってくる。美味しいケーキ屋さんは見つけたので、次は美味しい酒屋さんを見つけたいところ。