遊仙窟

張鷟『遊仙窟』について文章3つを書いてみました.

 

『遊仙窟』と「桃花源記」,『幽明録』の比較

「桃花源記」とは,桃が生命力や異世界の象徴であったことが共通している.『幽明録』とは,桃と川の登場など日本の桃太郎との共通性がある.理想郷へ行くという意味では浦島太郎とも共通性がある.

 

李白杜甫,蘇軾の旅

李白は生まれの地の蜀から出て江南など長江中下流域を放浪した.そして安陸で結婚して落ち着くが,そこを拠点に長安などへも行った.長安では朝廷にも仕え,讒言を受けて離れた後は洛陽で杜甫や高適と交わって山東や河南一帯を旅した.東魯で杜甫と別れた後は江南や幽州などに行った.安史の乱の時は廬山にいたが,玄宗の幕僚として招かれ獄にも繋がれた.そして夜郎に流されそうになるが赦免され,宣州を拠点に放浪して病死した.杜甫は鞏県の生まれで襄陽県に住み,晋に遊んで呉越に滞在し,洛陽に帰った.その後斉・趙にも遊び,李白とも出会って梁宋に遊んだ.その後長安や蜀にあったが,旅に出て湘江の船で客死した.蘇軾は眉山の生まれで地方官を歴任し,中央にも行った.そして左遷され黄州に行き,蘇東坡の由来を得た.中央に一時戻った後に再び左遷され恵州や海南島に行った.その後許されるが,帰還途中に常州で没した.

 

『遊仙窟』が中国では失われ,日本で伝承された理由

中国では元来フィクションや小説の地位が低く,またその先進性より他の作風から却って孤立して失われた.一方日本では,源氏物語などフィクションの地位も高く見られていたので,元々の美文性や独創性から長く読み継がれた.