『ゴリオ爺さん』評

バルザックゴリオ爺さん』に関して簡単にまとめました.

 

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バルザックは個人と環境,社会を結びつけて時代の全貌を表現するリアリズム小説の旗手で,「風景」や「描写」に関して文学的な意味のある技術を取り入れ,「小説」というジャンルの地位向上の立役者の一人である.その作品の中でも『ゴリオ爺さん』に登場する「父」は重層的で,その描写は革命以降のフランス社会や「19世紀の首都」としてのパリを具現化している.現実社会の注意深い観察と階層社会のリアリズムを,誇張を通した方向性のある緻密な描写で描くことを皮切りに,見知らぬ他人どうしが共存する猥雑な都市空間の縮図を下宿屋の上に描き,そこで勃発する意外な事件をミステリー風に描き出している.そして父性愛に満ちた自己献身的で倒錯的なゴリオ爺さん,娘を顧みない冷酷な父親であるヴィクトリーヌの父,血縁とは無関係の父親役をかってでて悪意と愛情に満ちた脱獄徒刑囚のヴォートランと,三者三様の父親像が描写される.ラスティニャック青年はこの間で翻弄され,父性のキリストであるゴリオ爺さんが娘への愛情のかけ方に失敗して臨終を迎えるのを目の当たりにし,フランス社会の「父性」の危機が具現化され,王政廃止が暗喩される.ラスティニャックが「父」を受けた「子」として,社交界に挑戦しようということでこの物語は幕を迎える.絶対的な価値が揺らぐ時代で自らの生きる道を切り開いていくことが求められていることが表されている.その詳細は他のバルザック『人間喜劇』の作品にも描かれ,作品どうしが有機的に相互作用している.

 

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今日は放送大学の成績発表がありました.基本的にはA+放送大学表記ではAをマルで囲む)のものが多く,「西洋芸術の歴史と理論」はA,「エネルギーと社会」「身近なネットワークサービス」はB,「コンピュータ通信概論」はCでした.BやCをとったのは初めてでしたが,今見返してもなんで誤答をしたのか分からないものが多く,同じ日に受験していたのでボケていたのかもしれません.「西洋芸術の歴史と理論」「エネルギーと社会」は専門とはかけ離れているのでまだよく理解していない部分もあったと思います.「身近なネットワークサービス」「コンピュータ通信概論」は,組込みシステムとネットワークとデータベースという情報技術者の三本の柱のうちで普段一番気にしていないネットワーク関連分野なので,よく分かっていないのだと思います.今回の成績は,もっと精進しないといけないことを示しています.

 

結局,全科履修生としても十分に卒業できるだけの単位数にはなりそうなので,来期からは3年次編入学で情報コースの全科履修生になることにしました.来期は卒業を視野に入れてオンライン授業が中心となり,その後はほとんど科目を取らないまま卒業までの時間が経つのを待つ予定です.面接授業の抽選結果が出たら,次にとる科目を述べます.