Origin and evolution of pathogenic coronaviruses

私が筆頭著者として執筆した “Origin and evolution of pathogenic coronaviruses” というGeneral CommentaryがFrontiers in Immunologyに受理され,もう直ぐ公開されます.Figureや引用文献などを除いた本文だけは既にインターネット上で見ることが出来ます.

 

https://www.frontiersin.org/articles/10.3389/fimmu.2020.00811/full

 

最後の行はWordの自動校正機能のせいで “fieldworks” が “filed works” になっていますが,校正時に修正する所存です.

 

本当に読んで欲しいのは,本文だけでははっきりしませんがこのcommentaryが主にmentionしている Cui et al. (2019) “Origin and evolution of pathogenic coronaviruses”, Nature Reviews Microbiology 17: 181-192 という総説の方です.この総説はCOVID-19のアウトブレイクの前に既に近いうちに新型コロナウイルスによるアウトブレイクが起こることを予測したもので,それだけでなく内容もきちんとした科学的根拠を元にしっかりと論理展開・論証をしたものです.最近よく出回っているテレビインタビューを根拠にしたり,方法論が非常にいい加減なものではないのは,疑問に思う点について引用文献を辿っていくと全てしっかりしたものなのでよく分かります.最近よく出回っている方は試しに数本文献を辿ってみたら全て出鱈目なのでそれ以上調べる気を無くすものが多いので,大違いです.

 

私たちのcommentaryは,進化的視点を元に総説の内容を纏めて紹介し,さらにCOVID-19やその他重要な文献も交えて引用したものです.総説を読む前に予習したり,総説の意味が取りづらかった時に復習して頂ければ幸いです.ウイルス学の総説なので感染症の研究とはかなり異なる視点になり,病気の予防などには直接役立つ訳ではありませんが,いろいろ興味深い視点がしっかりとした論拠を元に提供されています.

 

詳しくは紹介した総説を参照して頂きたいのですが,SARS-CoVsはコウモリを一次宿主として様々な二次宿主を経た後にヒトにも感染するようになるのは分子系統学的証拠からほぼ明らかです.コウモリ由来という情報が嘘なのではありません.COVID-19に深く関わる情報としては,例えばワクチンや特効薬のターゲットにはコロナウイルスの細胞感染に深く関わるSタンパク質をメインに考えるのがオーソドックスですが,コロナウイルスの場合そこは組換えのホットスポットで,ワクチンや特効薬との間には進化的な軍拡競争が起こることが現実的に知られています.コロナウイルスはウイルスの間では組換え変異を起こす確率がトップクラスに高いことの現れです.この意味で突然変異率が低いという情報は誤りになります.また,ORF3やORF8はSARS-CoVsで毒性を制御する可能性があります.その他にもいろいろ興味深い視点があります.

 

これでコウモリのコロナウイルスからは少なくとも三度目のアウトブレイクなので,コウモリのフィールドワークと実験ウイルス学がさらなるアウトブレイクを防ぐ為には必要不可欠になるでしょう.例に挙げた総説は非常によく纏まっていて研究者からも評価が高い論文ですが,SARS-CoV-2を踏まえてさらなる基礎研究が求められているのだと思います.