2020/12/20までのSARS-CoV-2のexPzDomによる解析をアップします. PCR新規陽性者数の指標値はおおよそ緩増モードです.COVID-19重症者数の指標値の方はほぼ緩増モードです.大阪府のRRRも上昇しています.
イギリスで感染力が70%程度上昇したSARS-CoV-2のvariantの話ですが,その実験系ではSタンパク質の遺伝子のみをVSVに組み換えで入れ込んだシュードウイルス(コロナウイルスのほとんどの遺伝子が欠如した状態での実験なので,コロナウイルス自体の性質とは言えない)で細胞に対する吸着能が1.7倍になったということが正確な情報のようです.
参考:https://seikagaku.jbsoc.or.jp/10.14952/SEIKAGAKU.2017.890251/data/index.html
これはSタンパク質の性質を調べているだけで,もっとマクロなコロナウイルスの「感染力」や「増殖能」に関する知見ではありません.予防的な措置を取るのはいいのですが,不確かな情報にあまり惑わされないようにするべきだと思われます.科学において言葉を大切にするのはコンディヤックやラヴォアジエの時代から大切なことで,そうでないと本来無かった意味が勝手に付与されて情報がどんどん歪んでいきます.話が面白くなる方向に言い換えるなど,特に禁物です.表現型をあまり左右しないvariantがウイルスの感染の中で見られるのは当然ですが,ほとんどの場合はそれは遺伝的浮動によるものです.SARS-CoVの蔓延時は確かにhTor02株がSARSの蔓延の中〜後期にORF8をORF8aとORF8bに分ける形で出て来て,それがウイルスの強毒化に繋がったとされています.ただコロナウルスの変異率は(組み換え率は確かに高いので他のSARSr-CoVとの関係は注視した方が良いでしょうが)ウイルスの中で中程度なので,そういうことはそんなにしょっちゅうは起こりません.D614GもL/S型もただのほぼ中立的なvariantでしょう.先日も噂話と思い込みに立脚したかのような科学的でない論文をreviewしたばかりですが,落ち着いて情報を見る必要があります.
PCR新規陽性者数
COVID-19重症者数