朝ドラの話その他

現在放送されているNHKの朝ドラ『らんまん』は,キン肉万太郎さんを主人公としている.実在の植物学者牧野富太郎をモデルとしたフィクションだが,当時の雰囲気を感じる上では面白い.万太郎さんはこれからもいろいろやらかしてくれそうだ.このドラマには後に番頭となる井上和之助をモデルとした竹雄が出てくるが,彼のような支えがあってこその万太郎さんである.

 

ところで画工として出てくる野宮朔太郎は,おそらく平瀬作五郎がモデルとなっているのだろう.彼はイチョウ精子の発見者で,2020年の高校生のWeb総合文化祭での埼玉県立川越高校の演劇『いてふノ精蟲』では主人公として登場した.

 

https://uemine3151.net/2020/11/02/web-ichou-no-seichu/

 

牧野富太郎も脇役として出て来る.平瀬作五郎を主人公とする辺りは,日本の中等教育の理科の授業を体現しているようで渋い.演劇は,以下のサイトで見られる.1時間ほどなのでお暇な方はどうぞ.


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2020年はCOVID-19の影響で高校演劇の全国大会の公演が結局無くなり,Web総文としてコンクールは行われなかった.私の出身部活である私立洛星高校演劇部の『とりでのむこう』も,その煽りをくらった.川越高校との対決も無くなった.高校演劇の全国大会は高校生の純粋さと熱意を感じられる催し物なので,興味がある方は覗いてみてはいかが.


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ところで,『劇場版PSYCHO-PASS サイコパス PROVIDENCE』の評論で分かり易いものがネットに出ていた.以下で参照できる.AIとの絡みが書かれている.

 

https://realsound.jp/movie/2023/05/post-1332727.html

 

今期は放送大学で『英米哲学の挑戦』という講義も受講しているが,今日は「人生の意味への懐疑−不条理とアイロニー」という回だった.講師の古田徹也先生の論旨が明解で分かり易い.人生の不条理に対して反抗することで誇りを覚えるというカミュの視点は私には単なる自己満足感ではないかと感じられるので違和感を覚えるが,誠実さを持って対処するという点では納得が行く.何かの問題に対処するのに誠実さが求められるのは当たり前である.ネーゲルのネズミの生とヒトの生の話は,生物学的にはネズミとヒトの意識のありようはネーゲルが考えているよりもずっと近いものであると思われるので違和感があるが,アイロニーが織り込まれた真剣さで対処するという言葉には納得が行く.あくなき努力はそういうところから生まれ,ヒロイズムや嫉妬や自己満足とは関係がない.中島敦の『悟浄出世』を引用したまとめも分かり易い.九鬼周造の「つねに「幻滅」に運命づけられている無限の善意志」という概念も,そこから振り返ると分かり易い.人生観に関わる虚妄から逸脱するロジックとして,面白い回だった.勿論,こういう話題は文学のタネとなる.