Сказка(邦題:独裁者たちのとき)

 

Александр Николаевич Сокуров監督の “Сказка(邦題:独裁者たちのとき)” という映画を観ました.Сокуров監督の “Солнце(太陽)”, “Faust(ファウスト)” などの作品は過去に視聴したことがあり,歴史や壮大なストーリーをブラックユーモアを交えた重厚な映像で見せてくれるのが面白いところです.

 

“Сказка” は,Ио́сиф Виссарио́нович Ста́лин,Sir Winston Leonard Spencer Churchill,Adolf Hitler,Benito Amilcare Andrea Mussoliniが死後の煉獄でお互いのうちどれが本当の自分なのか分からないほどに増殖して天国への扉が開くのを待っている中,互いに揶揄しあっている様子を描いたものです.その様は,キリストですら呆れて彼らを待っているのが辛くなるほどです.物語の後半で「熱狂する群衆の霊」が押し寄せて来て,他の2人に比べてモブ気味のHitlerとMussoliniは群衆を歓迎して交わりますが,Ста́линは彼らが自分たちを滅ぼそうと思って大挙して押しかけていることが分かっており,冷笑しています.Hitlerの “Mein Kampf” は読んでも分からなかったという表現が出ているほどモブ気味の2人はいかれた独裁者である表現がありますが,Ста́линは自分のやっていることが虐殺であるという自覚をしながら虐殺したという,末恐ろしい描写があります.虐殺した人々の数でもСта́линは他の人々よりも群を抜いて多い訳ですから,この描写には背筋が凍ります.最後に,Churchillのうちの1人が「熱狂する群衆」など相手にしていてはいけないと,その場に背を向けて一人天国の扉に赴き,救われますが,他のChurchillたちと独裁者たちは煉獄にとどまったままです.神は「また彼らが必要になる」という預言を残します.

 

映像は過去のアーカイブの素材のみからできており,台詞は過去の手記や発言のみから成り立っています.悪夢で煉獄を彷徨っているかのようなその重々しく不気味な映像に,1時間半弱の間釘付けになりました.