アエネイス

ウェルギリウス『アエネイス』について文章2つを書いてみました.

 

アエネアスの受けた予言

ロス島でアポッロから「頑健なるダルダヌスの末裔よ,汝らをば父祖たちの始祖から初めてもたらした大地こそが,汝らを豊かな乳房をもって帰還者として迎え入れるだろう.太古の母を求めるがよい.そこでアエネアスの王宮があらゆる諸地域を支配し,息子たちの息子たちと彼らから生まれる者らもそうなることだろう.」という予言を受けた.クレタ島で疫病に遭ってからは,先祖神より「とある場所あり.それをギリシア人はヘスペリアの名で呼ぶ.古い大地であり,武力や土壌の豊かさにおいて強い.かつてオエノトリ人が住んでいた.今や,人々の言うところでは,彼らの子孫が王に因んで民をイタリア人と呼ぶようになったそうである.ここが我々固有の場所であり,ここからダルダヌスと父なるイアシウスとは生まれ,ここから我々の家系は生じた.さあ起きよ.このことを確かなることとして高齢の父に言え.彼にコリュトスとアウソニアの地を求めさせよ.ユッピテルはあなたにクレタの土地を与えることはない.」という予言を受けた.そしてブトロトゥムではアポッロの神官ヘレヌスより「女神の御子よ,あなたの航海は,一層大きな徴を伴うものであり,しかと保証されている.そのように運命を神々の王は定め,禍福を変転させ,そのように物事の順序は巡る.好意的な海原をより安全に渡るために,またアウソニアの港に落ちつくことができるように,多くの事柄のなかの僅かだけれども,言葉でもって私は解き明かそう.というのも,その他のことはパルカエがヘレヌスに知ることを禁じ,サトゥルヌスの娘ユノーが話すことを許さないからである.まず第一に,あなたはイタリアをもはや近くにあるものと考え,事を知らぬお方よ,近くの港へ入り込む心構えでおられるが,道なき道が,長く続く大地によってこれを隔てている.安全なる大地に都市を築くに先立って,トリナクリアの海で,櫂をしならせ力いっぱい漕ぎ,船でアウソニアの海原を,冥府に続く湖とアエアエアのキルケの島を,通らなければならない.」という予言を受けた.その後,予言は安住の地に到着した事を確信するための目印を教えた.ギリシア系住民が住むアドリア海沿岸を避け,難所のメッシナ海峡も避け,シチリアを巡る迂回路をとり,ティレニア海を渡ってイタリア半島に近づくように諭した.さらに祈願や捧げもので繰り返しユノーを宥めることを提案した.半島に着けば,クマエのアポッロ神殿で巫女シビュラで先住民との戦争や戦を避けたり耐えたりする方法を託宣できるようにする事を促した.その託宣の内容は,「お前にはシモイス川もクサントゥス川も,ドリア人の陣営も欠けることはない.ラティウムには,すでに第二のアキレウスが生まれている.彼もまた女神の御子である.トロイア人にはユノーがつきまとうことを止めないだろう.その間,お前は窮地に陥った嘆願者として,イタリアのどんな民に,どんな都市に泣きつかないことがあろうか.トロイア人にとってのこれ程の災いは,またしても異国人の妻であり,他民族との結婚である.お前は禍に屈してはならない.運命の女神がお前に許す限り,これまで以上に大胆に進むべし.安全の最初の道は,お前には信じられないことであろうが,ギリシア人の町から開かれよう.」となった.

 

ユノーはいかにトロイア人のイタリア行きを阻んだか

ヘレヌスからの託宣を部分的なものとし,後にカルタゴがローマに滅ぼされる運命に逆らってトロイア人がイタリア到着を目前としている時に嵐を起こしてカルタゴに漂着させ,トゥルヌスを煽ってアエネアスに対する軍事行動に駆り立ててラティウムトロイアの同盟関係を破綻させた.