オイディプス王

ソポクレス『オイディプス王』について文章2つを書いてみました.

 

ソポクレス『オイディプス王』の筋でアイスキュロス『テーバイを攻める七人の将軍』にはない伝説的要素

まず,テーバイが酷い疫病と飢饉に見舞われ,オイディプスの存在により神の怒りをかっている描写がプロロゴスにある.そして,クレオンが予言者の予言としてそれを伝える.これを受けて第1エペイソディオンではオイディプスは王としての責任を持って前王ライオス殺しの犯人を探し,それが悲劇的アイロニーとなっている.第2エペイソディオンではクレオンとの口論からオイディプスのかっとしやすい性質が明らかになり,ライオス殺しの伏線が仄めかされる.第3エペイソディオンではコリントスからの使いの知らせで妻イオカステが母であることを,第4エペイソディオンでは羊飼いにより自分が父ライオスを殺したことをオイディプスは知る.そしてエクソドスでイオカステは自殺し,オイディプスは自らの目を抉って追放される.元々のストーリーよりも論理的な詳細がはっきりしている.

 

オイディプス王』と「見る」「知る」

全てを最初から「知る」のは神視点である観客のみであり,人間であるオイディプスはスピンクスの謎を解いたとはいえ,それでも全てを前もって「知る」ことは出来ていない.「知る」ことが予め出来れば悲劇的な結末は回避出来た筈であるが,人間にはそのようなことは出来ない.それがオイディプスが自らの「見る」ことの意義の喪失感を齎らし,目を抉ることに繋がる.そうすることで,自らの責任を引き受けたと思いたかったのであろう.それが彼が最後まで英雄として評価されることに繋がる.