関連性の誤謬

2022年3月20日東北大学の河田雅圭先生が「「種の保存のための進化」はどこが誤りなのか」という記事をnoteにupされていた.「種の保存」のために生物が進化することはないということを主張されていた.

 

https://note.com/masakadokawata/n/n41079da12807

 

このことについて,私は以前コメントした.

 

https://shunadachi.hatenablog.com/entry/2022/03/22/162045?_ga=2.139659443.1823246367.1650517252-378431449.1650517252

 

のべつ幕無くコメントするのもどうかと思ったので,その時は疑問点のうち幾つかしかコメントしなかったが,「「種の保存のための進化」はどこが誤りなのか」という記事は乗っけから奇妙だ.レミング集団自殺の捏造が冒頭から挙げられている.しかし,これは捏造した人の問題ではあるが,実際のレミングの集団に選択がかかっているかいないかということに対しては何の情報も与えていない.こういうことは論理学では「関連性の誤謬」というらしい.

 

ある学者はバナナがダイエットに効果があると主張しているが,その学者はバナナの輸入をしている.だから,その主張は間違っている.

 

という例と全く同等の構造をしている.バナナダイエットに効果があるという主張をしている人に利益相反があるからと言って,その主張は偽であるとは言えない(勿論,真であるとも言えない).これは妥当でない推論の一例である.レミング集団自殺の捏造も,レミングの生態の進化については何の情報も与えていない.勿論,私もレミング集団自殺するとは考えてはいないが,それはその証拠がないからである.この筋で捏造の件を挙げることには論理的妥当性はなく,論理学の世界では修辞や詭弁と呼ばれるらしい.論理ではなく,感情に基づいた印象論を誘導する意味しかないからである.こういう非論理的誤謬は論理学というほど難しいものではなく,日常の論理展開の過程で十分気をつけないといけないレベルの類だ.一端の研究者や元研究者が,こういう言説を聞いて何とも思わない場合もあることには疑問を覚える.