嵐が丘

エミリー・ブロンテ嵐が丘』に関して短文4つを書きました.

 

嵐が丘』の中の語りの特徴

嵐が丘』で描かれているのは,宗教的な解釈もできる冒頭の不可解な夢で結末が閉じないことを示唆することに始まり,名前を共有する異なる登場人物の相互的な同一化,所有の欲望,コミュニティの破壊と再生のカオスである.その為,時間経過に沿って整理して辿るよりも語りがある程度錯綜している方が表現として相応しい.

 

ヒースクリフの人物造形

嵐が丘』のヒースクリフの人物造形はシャーロット・ブロンテの『ジェイン・エア』のロチェスターやバーサ,ジェイン自身と重なる部分がある.その為,『嵐が丘』は『ジェイン・エア』の翻案ともとれる.

 

時代背景

嵐が丘』の中の不可解さ,カオス,同一化,所有への欲望,破壊と再生はまさに同時代のアメリカ独立戦争フランス革命産業革命を体現しており,人物関係がそれら社会事象のミニチュアとなっている.

 

動物比喩

嵐が丘』の登場人物の動物比喩は,登場人物がその原初的な欲望に忠実に生きていることを表現している.作者が森羅万象の共通要素としての “life force” が人間,動物,自然に流れると考えていたことの一つの現れともなっている.

 

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「西洋芸術の歴史と理論」の第4回目の講義では,超越のプラトン主義としてのロマネスク美術が扱われた.理論的にはシトー派のベルナールが大成させたが,その実際の建築を見ると地方の石材を生かし,三位一体などの宗教論理も反映させられ,抑制の効いた表現が特徴である.表現への傾倒と抑圧との関係など,Россияで上映が禁止になった “Ска́зки” を創ったСокуров監督を思い出す内容だった.