Plagiarism

某数理物理系の有名雑誌の査読を頼まれていたので,原稿を一通り読んだ後にコメントのメモを取り,それを暫く寝かせてから今日になって再び査読の深化に取り掛かっていた.何がオリジナルの貢献かが結果からは見えて来なかったので,Googleのテキスト検索でキーワードを入れて出てくる情報の中の画像を中心に眺めていた.こうした方が有用な関連論文を効率的に認識出来る時もある為だった.すると,査読中の論文のプレプリントでもないのに査読中の論文の図とよく似た図を持つ別著者の公表済み論文が引っかかったので,調べてみると大変遺憾なことが分かった.

 

  1. 査読中の論文のモデルの方程式はその記号の一部の表現を変えているだけで,別著者の公表済み論文と数学的には全く同一のものだった.
  2. 査読中の論文のキーワードやロジックの構成は,別著者の公表済み論文のものと内容的にはほとんど一緒だった.公表済み論文の相図の部分は査読中の論文では何故か省かれていたが,あとは奇妙なまでに酷似していた.
  3. 査読中の論文では数値計算は少し異なるパラメータ条件で為されていたが,結果の概要は別著者の公表済み論文と同じだった.

 

これは盗用の可能性があるので,今まで何十回と行って来た査読の中で初めてplagiarismの可能性があると思い,編集部に直ぐ指摘した.英語の表現は異なるので機械的剽窃チェックには引っ掛からずに査読に紛れ込んだのだろうが,内容的にはほとんど同一の論文が既に出ていて,しかもその論文に対する引用が無いのは大変如何わしい.危うくmajor revisionを提案するところだったので,今後とも査読は丁寧に行っていこうと思う.こういうケースの査読は初めてだったが,世間一般にはどの程度の頻度でこういうことがあるのかは知りたいところだ.