【追記あり】Arcane

Netflixアニメの “Arcane: League of Legends” を観た.Riot Games, Inc. 製作のゲーム “League of Legends” を題材としながらも,ストーリーは独自に展開された作品だ.先日のStingが担当したテーマ曲 “What Could Have Been” を聴き,歌詞の内容から鬱展開そうで興味を持って視聴した.ストーリーの内容は基本的には暴力的な要素のあるアクションとサイエンス・ファンタジーの世界を描いているが,バックボーンのストーリーがまさに今世界が求めるべきものとでも言える出来だった. 科学者であり,真っ先に先見の明を開陳するが故に放逐された“Professor” ことHeimerdinger,顔は怖いが奥に兄同様の優しさを持つSilcoなど,魅力的なキャラクターが多勢登場する.新海誠作品のような,ナルシストに媚を売っているようなものとは一線を画している.私は最近の国外のアニメはほとんど見ていなかったが,アニメーションの技術の進歩には脱帽した.昔のアニメは,アニメーションで動いているのは台詞のあるキャラだけで,他のキャラは止まっていることがよくある.それは下手な役者が演技しているのと同じようで,自分の台詞がある時だけにゼンマイを巻かれた機械人形のように動き出し,台詞が終わると動きがまたピタッと止まることに似ている.勿論棒立ちすること自体が演技になることもあるが,役者は基本的には台詞のある時もない時も常に「演技」していなければならない.そうでない演技は観客にはストレスフルだ.昔のアニメで下手な役者の芝居のような描写だったのはお金と時間と労力が足りないから仕方なくそういう状態で世に出さざるを得なかった意味合いが大きいと思うが, “Arcane” はそこが全く違う.フランス漫画風の絵の全てのキャラクターが,何某かの細かい動きをしていて常に「演技」しているのだ.これは今までの日本アニメとは全く異なる段階に進んだアニメーションだ.それと対照的なのが今WOWOWオンデマンドで見ている『火狩りの王』だ.『火狩りの王』は写実的な表現をわざと避けて見せ場で紙芝居的な表現をしていて,EDなどを見ているとやりたい表現の方向性が分かるが,普通のシーンでも時々絵の枚数が足りていないのではないかと思えるほど動きがカクカクしている時があり, “Arcane” のキャラクターの動きとは比べるべくもない.お金も時間も労力も足りていないのかも知れないが,原作が非常に良い出来だと思われるだけに,アニメ化の段階で問題があったのではないかと思わされた. “Arcane” はネットでの評価も軒並み高く,そもそも第49回Annie Awardsで9冠を獲得するなど,今まで知らなかったことが恥ずかしいくらいのレベルの作品なので,この作品の印象的なラストを飾る主題歌を提供して私に教えてくれたStingに感謝している.下のオフィシャルトレイラーから受ける印象とは良い意味で異なる余韻を持つ作品だ.


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【追記】

アーケイン特集のサイトを見つけた(黒人系のキャラに一人も触れられていないのが不満だが).

natalie.mu

やはり,専門職の方から見ても “Arcane” の製作技術は目を見張るものがあったらしい.

natalie.mu

しかも,上のインタビューはまだ3話までしか公開されていない段階でのものだ.その後,9話までの怒涛の展開で “Arcane” という作品はこの上ない飛躍をする.シーズン1を終えて,どういう評価に至ったのかもまた聴いてみたい.