位相的データ解析から構造発見へ

本日, 池祐一ら『位相的データ解析から構造発見へ』(サイエンス社)という本が届いたので,目を通した.主にパーシステントホモロジーについての本で,私が

https://doi.org/10.1371/journal.pone.0179180


https://doi.org/10.48550/arXiv.1603.00959

でメインに使用した手法の一部が,分かりやすく解説されていた.数学的にあまり厳密ではないので一見分かりやすい,という訳ではない.ではなぜ数学系の類書より私(たち)には分かりやすいかというと,今までの研究背景にあるモチベーションの違いが反映されているからだと思われる.何某かの知見を理解する際,今入力中の知見のことだけではなく,それに関連する知見としての点とそれらを結ぶ線とを予め頭の中に入れて理解するものである.つまり,研究背景が違えばそれらのネットワークは異なり,知見を理解する為のモチベーションも異なってくる.異なるモチベーションに対してはそれ相応に異なる表現が求められる.この本の表現はまさに私のようなニッチにいる研究者向けのものだったので,分かりやすいということだ.どの表現が正しいのかということではなく,自戒も込めて読者層を意識することが大切だと思う.

 

これは卒業研究のテーマ探しにうってつけだし,この本の属しているシリーズ「AI/データサイエンスライブラリ “基礎から応用へ” 」は買いだと思う.欲を言えば,私の解析手法のもう1つの柱であるエタールコホモロジーについても類書を出して欲しいが,それは流石に私以外に生物科学系でそういうテーマに興味を持つ人はいないかも知れないので,難しいかも知れない.『代数的サイクルとエタールコホモロジー』が生物科学系の必読書になるのは何時の日か...