妖精の女王

エドマンド・スペンサー『妖精の女王』について文章3つを書いてみました.

 

1巻のエルサレムへの巡礼のイメージの意味

イギリスが至高の女王かつ帝王として君臨する栄光に満ちたエリザベス1世の下で理想の王国になることへの願いを表している.つまり,巡礼はそういう王国を夢見ることを隠喩している.

 

アーサー王物語の旅との比較

アーサー王物語』では,旅や移動は形而上的な価値の可視化への願望を具現化させることに役立っている.そして,「誰もが求めるものは誰にも得られない」という教訓が現れ,主観主義的・個人主義的な誘惑が秩序を崩壊させる.それには社会的ロールプレーが必要悪であるという認識が背景にある.一方『妖精の女王』では,旅や移動は形而上的な価値を得るための修練やその実現の形であり,少なくとも前の方の巻では騎士たちの目的は成就されている.社会的ロールプレーも必要悪ではなく,徳が重視されている.

 

3巻のブリトマートの物語とアエネアスの建国物語との比較

アエネアス』と『ブリトマートの物語』では,主人公が共に高貴の出であることが共通し,放浪の後に王国の基礎を築くことになる.しかし,前者は現実的で,後者は教訓的である.