劇作家の別役実さんが亡くなられました.
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO56614030Q0A310C2CZ8000/
私は好きな劇作家の岸田國士戯曲賞受賞作品だけは自宅に揃えていますが,別役実さんのものは『マッチ売りの少女/象』(三一書房).
このうち前者が岸田國士戯曲賞受賞作品で,後者はまた別の代表作.この『象』は,個々の病室に隔離された人々が僅かな交流から「象」とは何かを知らずに目隠しをして「象」の全体像を探るような,社会的案配の組み立てをする様子が描かれています.「あとがきにかえて」にも,
「彼,尾形亀之助も,そうした原理体系がないがために,「おおやけ」と「わたくし」が相互に入り組む事情の中に或る空洞を見出し,それがために障子紙一枚の厚さを彷徨する事を強制されたのであるが,しかし彼は,その空洞に於て,障子紙一枚の厚さに於て,「手足をバタバタさせる」事によって可能な一つの方法を,我々に示唆したのである.「象は,その全重量が計量されて数字になった時に象なのではなく,それに触れて『うちわ』であり,『壁』であり,『柱』であると断定し,断定し切れないものを感じた時にこそ,むしろ象なのである」と云う方法である.」
とあります.俯瞰的視野のない社会への皮相ですね.
以前のブログでも別役さんの発言を引用させて頂きました.
ご冥福をお祈り致します.