シン・ウルトラマン

映画『シン・ウルトラマン』を観てきました.普通に楽しめる映画でした.1966-1967年のTVシリーズウルトラマン』をベースとなるモチーフとして,現代風でより現実的なアレンジが施されていました.外星人の地球人との認識のギャップやそれに連なる行動が段々と明らかになったり,ウルトラマンレヴィ=ストロースの『野生の思考』などを読んで地球人の研究をしている姿が印象的でした.山本耕史さんが登場した辺りからオマージュを超えて本格的に面白くなり,ラストはTVシリーズの草案としてはあったがボツになった内容を上手く活かした仕上がりになっていました.ネタバレなので詳しくは書きません.『ウルトラマン』シリーズを通したテーマは,最初からラストまで一貫して映画でも共通でしたが,また別物の作品としても楽しめる仕上がりでした.竹野内豊さんが登場したので,『シン・ゴジラ』の延長線上のようでした.TVシリーズ39話分が圧縮されて話の展開がかなり早いので,最後まで飽きずに楽しめると思います.

 

表現としてはTVシリーズで着ぐるみをパーツに分けて換骨奪胎していたのをそのまま映像の表現形式として取り入れ,その科学的な理由まで示されていました.ウルトラマンの人形が空を飛んでいる時の異物感も,不可思議な異星人の挙動としてそのまま生かされていました.また,カメラアングルも空想特撮映画ということで変わったものが多かったです.変わった特撮好きにも一般の人にも笑えるポイントがたくさんありました.科学考証としては疑問に思うところもありましたが,非粒子物理学なども登場しました.ウルトラ数学,ウルトラ物理学もあるようです.山本耕史さんは,土方歳三藤原頼長石田三成三浦義村などに続いてメフィラスの属性も付けましたね.長澤まさみさん,田中哲司さん,西島秀俊さんの他に岩松了さんや長塚圭史さんも出ています.高橋一生さんはウルトラマンの声優でした.劇場の反応も良かったようなので,騙されたと思って一度見てみては如何でしょう.

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テーマ曲の米津玄師『M八七』のM87の由来は,光の星のあるM78星雲ではありません.それはM87星雲の誤植で,ゾーフィの必殺技が元々の設定を踏襲して「M87光線」となっていることに由来します.現実としては,M87銀河にはおとめ座銀河団の中心の1つの巨大ブラックホールがあります.それらを踏まえた,ゾーフィ視点でのテーマ曲です.