マルクス主義批評

マルクス主義批評について短文4つを書いてみました.

 

マルクス主義批評の概要

マルクス主義批評は上部構造/土台論,唯物論弁証法に基づく階級闘争論,イデオロギー論からなる.上部構造/土台論は生産関係の総体からなる経済的機構という土台と法律的,政治的諸制度および諸組織,またそれらが成立するところに働く社会的意識諸形態からなる上部構造という二つのカテゴリーを設定して土台が上部構造を遥かに強く規定するという唯物論的立場である.階級闘争論とは不断に発展して行く生産諸力が既存の生産諸関係および所有諸関係と矛盾することによってそれを破壊しつつ順次新たな社会構成を生み出す歴史的変遷の契機となるという立論である.イデオロギー論はその歴史的段階において支配的な階級の利害関心を具体化し,物質的生産諸関係を貫く階級支配を隠蔽し,かつそれを合法化し永続化させる力として作用する.

 

ヴィクトリア朝イギリスの階級制度

大まかに上流階級,中流階級,労働者階級があった.上流階級は貴族や地主からなる.中流階級は擬似ジェントルマンの医者,弁護士,士官など専門職の上層,工場経営者,卸商,企業家,農場経営者など中層,商店主など下層からなる.労働者階級は労働賃金を得ている.

 

トマス・ハーディ『テス』のマルクス主義批評

『テス』はイギリスの小作人階級の破滅が主題の社会的ドキュメントだと読める.貧困は個人の責任ではなく資本主義における必然的結果と解釈し,性格悲劇ではなく状況悲劇だと見る.テスは上流階級の血筋ではあるが,物語内での中流階級から労働者階級に下落し,最終的には労働力だけでなく肉体的にも搾取されて殺人を犯し,処刑されるとする.

 

エミリー・ブロンテ嵐が丘』のマルクス主義批評

嵐が丘』はキャサリンヒースクリフの特殊な関係と,ヒンドリー及び嵐が丘における彼の体制に対する二人に共通した反抗の成立について語る第一部,キャサリンヒースクリフに対する裏切りの暴露とキャサリンの死という第二部,ヒースクリフが復讐を誓う第三部,ヒースクリフの変化と死についての第四部に分かれる.復讐とは支配階級に対する労働者階級の反逆であり,ヒースクリフは支配階級になるがさらなる反逆を受けて支配階級の虚しさを知り絶命する.