ドン・キホーテ

セルバンテスドン・キホーテ』に関して短文5つを書きました.

 

ドン・キホーテ』の音読の効果

ドン・キホーテ』を音読した場合,会話のちぐはぐさや多種多様な語り口の違い,会話における駆け引きがリアルタイムで直に味わえる.

 

ドン・キホーテとサンチョの関係

最初は教養ある理想主義者で気が短い騎士と無学だが農民の知恵を備えた従者という主従関係で,上位にある主人は従者の考えを認めず,従者は主人の考えを疑う関係だが,友人同士のように和気藹々としている場面もある.彼らは対話を繰り返すことによってサンチョはドン・キホーテから騎士道に関する知識や作法,精神,腐敗を正す正義について学び,騎士道の信奉者となる.それはドン・キホーテの純粋さや正義感,人柄の良さに惹かれて尊敬するようになるからである.一方,ドン・キホーテはサンチョから農民や庶民の知恵を学び,次第に狂気や妄想から醒めて現実に近づく.こうした相互浸透による弁証法的成長は友情の為せる技である.

 

ドン・キホーテ』の人気の理由

大衆的な娯楽小説とも取れるし,専門的な教養を踏まえた読解に耐える重層的な性格をも持ち,理想主義に対する再認識を与えることが現代での人気に通じる.騎士道物語の滑稽なパロディ,理想主義や挫折の繰り返しによる悲劇性,人物造形や技法の複雑性,異端審問に対する皮肉など宗教に関する批判などが19世紀小説の原点ともなっている.

 

ドン・キホーテ的」とは

人の性格や行動がドン・キホーテのように無謀で愚直であることを含意するように思える時.

 

ドン・キホーテ』における女性

ドン・キホーテの姪と家政婦は騎士道文学を全て燃やしてしまおうとするなど保守的なキリスト教徒を体現していて現代的ではないが,カルデニオとルシンダ,ドン・フェルナンドとドロテアの恋愛劇,またマルセラの独身を貫く志の見事さなどフェミニズム的要素は現代的である.