告白

ルソー『告白』に関して簡単にまとめました.

 

印象的なエピソード

唯一無二の存在として自負心が高く,周囲と打ち解け和えずに奇行も目立つが,それでも著作を出すことでコミュニケーションを諦めなかったことが,フランス革命の思想的基盤となった.即ち,自由と平等の概念の確立である.

 

ルソーの子供時代

それまでのメモワールと異なり,自らの子供時代を『告白』中で描くことで子供時代が人格形成に与える影響の重要性が見出される.即ち,誕生と共に母を亡くしたことによる喪失感や母の残した小説からの学習などロマン派文学的な事実,そのことを語る父からの感情の繊細さや愛情深さの学び,そして古典の読破と独立不羈の精神の教育である.

 

ルソーの幸福

ヴァランス夫人の庇護下で読書と独学により著述業の基盤をつくりあげたルソーは,晩年は陰謀論にも取り憑かれ,孤独に苛まれるが,それで周囲との関係とは超越した形で「自己」を追求した.そして,そこに自然の中での平穏と安寧,自己充実感を見出した.それでもなお,著述業は止めなかった.

 

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「西洋芸術の歴史と理論」の第7回目の講義では,新プラトン主義としてのイタリア・ルネサンス美術が扱われた.思想的には天上と地上の別があり.ラテン語での語源を考慮すると地上と関わりの深い母は物質に連なり,それが物質でできた作品と関係し,芸術は地上のものとすることが述べられた.それを踏まえると,ボッティチェリの<<春>>では理性を司るメルクリウスは地に足をついた地上の状態でなお天上の世界を目指すことが描写されていた.ミケランジェロのシスティナ礼拝堂天井画では絵順としては時間的に原点回帰が,空間的には神,預言者,人間の関係が描かれていた.アダムの創造の作品ではアダムの創造前にイデアとしてのイヴが既に現れていて,古典的解釈とは異なる男女平等の精神が表れていることには興味を惹かれた.芸術の背後にある思想はやはり面白い.